『またたきさえー散りばめられた時間と集積ー』

   

 幼少より画家を志し、17年前に多摩美を卒業した烏山は、画家としての活動を成熟させつつある。

約十年前に故郷である長崎県諫早市に拠点を戻し、

近頃は田園風景が眼前に広がる小高い丘の中腹に建つ古い一軒家をアトリエとして使いはじめたようだ。

そこにはこれまでに集めたという数知れない愛玩具が整然と並べられている。

若い頃から収集癖が強く、美術作品はもとより、

骨董品や人形、最近では廃バイクなど一般的には不要とされる物にまで手を伸ばしはじめている。


 昨年末の“10 Possible or Not Impossible”展で取り組んだ作品がきっかけとなり、

現在では顔料集めというコレクションに奔走しているようだ。

繁華街の道路脇、有明海の干潟、山林や沢などあらゆる場所で顔料となり得る所謂ごみを集めては、

すり鉢ですり潰し、濾して、瓶詰めにしたものへ丁寧に日付や採取場所やコンディションを記入している。

どのような色を発するかという経験からの想像と採取した場所の持つ特性や素材の本質が採取を決定する判断であるという。


 円柱状の4本の棒で矩形の木枠を作り、そこに半透明のオーガンジーを画布として張り、

綿密なドローイングを重ねて、丸や四角などの図形を点として打っていく。という仕事に長らく烏山は取り組んでいる。

円柱状の木枠に巻き込むように張られた画布には、巻き込まれている部分にまで図形が描かれていて、

鑑賞者の立ち位置によってミリ単位で境界を伸縮させることになる。

これは水平線や地平線のまるさからヒントを得ているそうだ。

また半透明の画布は表裏からの仕事を可能にし微妙な揺らぎを生み出す効果と共に、

壁面の状態や照明に大きく影響されることになる。


 矩形の木枠に張られた画布に顔料を定着させるという宿命を背負う絵画。

その形式に可能性を見出し、全ては点から始まると捉える画家のせめぎ合いから生み出された独自の様式に加え、

採取した天然顔料を用いた新作を携えて、アズマテイプロジェクトの3つの異なる空間で6年振りの個展を開催する。

                                                                東亭 順 2020年

ー 「零的」について / 若林 奮 ー


 この作品では、それに使われている素材が別の用途を持つ名称として見えてくる。
例えばビニールシート、細い釘、タッカーの針などである。
それらのものと作者の持つ想像や、想いうかべる風景の間にはなにかしら現在という要素において関連があると考えられるが、
作品を見る私は、その関係を知らなくてよいと云える。

この作品に展開されているのは、それらの素材が持ち、この作者がそこに見い出した新鮮な一面であり、
それらを組合わせによって表現された、広々とした空間なのである。

                                                                                                                                                                                                                                                       若林 奮 2003年