KARASUYAMA HIDETADA


PROJECT#35
Group Show - Perspectives
Artists: Samuli Blatter, Shinpei Kageshima, Shida -Toso, Jun Azumatei
11 - 26 March 2023
14:00 - 18:00
only open weekends and holidays
#35 4つのパースペクティブ - 例えば風景もしくは黒っぽいなにか-
出品作家:サムリ・ブラッテル、影島晋平、志田塗装、東亭順
企画:不二七
会期:2023年3月11日(土) - 26日(木祝) / 土日祝日のみ開場 14:00-18:00
談話席:調整中
パースペクティブ。透視図法や遠近法を指し日本語では略してパースと呼びます。また、視点・ものの見方・眺望・将来の見通しなどの意味を含む言葉です。ルネッサンス期に生み出されたこの技法は、空間のイメージがわかりやすいよう建物などに自然な立体感を与え、画面上における視線の誘導などに用いられてきました。現在も分譲マンションの完成予想図やゲームなどの仮想空間にその効果を発揮しています。しかし、実際の生活では、あらゆる軒先からそれぞれの方角にかかるパースが無数の消失点をつくっており、すっきりと整ったパースで統一された環境に身を置くことは稀でしょう。加えて手のひらに収まる小さな矩形の画面を覗き込みながら大半の時間を過ごす現代の生活では、一息ついて見通しをつけることなどできる気がしません。
振り返らず・脇目もふらず・時間をかけず・肉体への負荷もなく知識を瞬時に得ることは、ストレスを抱え忙しく立ち回る現代の私たちにとって素晴らしい時短パフォーマンスです。ながら視聴などの「ながら行為」で効率的に時間を使うことや、映画やドラマの時短視聴、数秒で完結する動画アプリなどはその代表でしょう。この時短の真逆とも言える行為のひとつに芸術鑑賞があります。そこには筋書きもなければ、フリもオチもなくフラグも立てられていません。物音を立てることさえ憚られ緊張感を強いる静けさに包まれたガランとした空間で、壁に掛けられた謎のモノを見て気の利いた感想を言わなければいけないような空気。もっともらしい文章が添えられているけれど、何ひとつ満足な答えらしいものを得ることができずに眠気さえ誘う場所。ボケーっとしていることがむしろ求められるほとんど唯一の場所。一部の愛好家を除けばもはや贅沢を通り越してコスパもタイパも非常に悪い空間と言えるでしょう。
握りしめた液晶画面を凝視する姿と絵画鑑賞を比較してみると、フレーム内に注ぎ込まれる視線の集中力だけは似ています。絵画が動くことはないので、身体を近づけたり遠のけたりして、そこにある情報を整理して自分の心の動きを分析するしかありません。絵画鑑賞とは非常に能動的に作品と対峙しなければならない行為であり、鑑賞者を試す装置であることにほかならず、どれだけの時間をかけても文句を言われません。それは、作品だけに意識が注がれる空間であり、目の前にあるのは、作者のパースペクティブによって選択されて描かれた指針です。そこに描かれたものに鑑賞者が価値を見出すかどうかわかりませんが、どんな解釈をも受け入れるものであるべきです。四組の見方が重なり絡み合うその眺望に心が動かされ、何かを見通すことのできる場となることを願っています。〈不二七〉
サムリ・ブラッテル
フィンランド生まれ、東京在住。ベルン芸術大学現代美術修士課程修了後、アールガウ美術館、ルツェルン美術館などスイスを中心に発表。2020年TOKASにて滞在制作。2022年12月より東京に活動拠点を移す。鋭利に削られた鉛筆のみで描かれたドローイングは版画もしくは彫刻的な仕上がりをみせる。
影島晋平
https://shinpeikageshima.mond.jp
1985年神奈川生まれ、多摩美術大学大学院美術研究科(修士課程)絵画専攻修了。主な展示に「相模原」、「地面と幾何形体」、「想起と泥棒」、「風&景」など。2023年初めに新作ドローイング集『DUNAMIS』を制作。
志田塗装
横浜を拠点とする創業1874年の塗装屋。創業者の志田勘三郎は、日本の先駆的なペインターである町田辰五郎に師事。日本人初のペンキ塗装工事と云われる横浜応接所の塗装を経験したことから、生涯をペンキ塗装に捧げる。現在は、志田英治が代表を務め、外壁の雨染みや傷、汚れなどの経年劣化の風合いを塗料で描き再現する特殊塗装を主な業務として行い、その傍ら建物の外壁塗膜を剥がし取り収集する活動を行う。
東亭順
https://www.junazumatei.com/bio
2015年より横浜に拠点を移す。多摩美術大学グラフィックデザイン学科卒業、HGK修士課程中退。アズマテイプロジェクト初代代表。

